脳動静脈奇形の塞栓材料の開発を行なっており、前年度はエタノールを溶媒としたオイドラギッドを開発したが、今年度は溶媒を必要としない、液体塞栓材料を開発した。材料はポリビニルアセテートエマルジョン(以下PVAcEと略す)である。この材料はこれまでに医用材料として、血液バッグに使用されている。PVAcEはPVAcのポリマー微粒子の分散液で、媒体はpure waterである。カチオン基を与える重合開始剤により、微粒子上に正の電荷を有している。分散液の状態ではこれらの正の電荷の反発力により分散系を維持するが、血液中に放たれた場合、血液中の負イオンの存在のため、粒子間で負イオンをはさんで凝集が生じる。この凝集したPVAcが血管を閉塞する。凝集は3秒以内に完了した。動物に対する組織反応をみるためにラット背部皮下に注入し、経時的に観察した。注入1日後よりmacrophageを主体とする細胞浸潤がみられ、その後徐々に固化したPVAcの周りから、求心性に線維性組織の侵入および多核異物巨細胞の出現が認められた。これらの反応は遠心性に伸展する傾向は全く認められなかった。また21頭のrat腎動脈に注入を行い、経時的に組織反応を観察した。急性期でも慢性期でも内皮を含めて血管壁への科学的または物理的障害は認められず、また血管壁への細胞浸潤はごく軽度であった。また皮下への注入の実験でみられたような線維性組織の侵入は全く起っていなかった。ついで犬腎動脈への注入実験を行なった。腎動脈に誘導したカテーテルからPVAcEを注入した。15頭の成犬を用いた。PVAcE濃度が7%-10%のものが70-80ミクロンの動脈を閉塞することがわかり、このあたりが、脳動静脈奇形の塞栓術に有効であろうと考えられた。
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