神経細胞死及びてんかんにおける興奮性アミノ酸、エンドセリン及び神経成長因子の関与

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454365
• 研究機関: 埼玉医科大学
• 研究代表者: 茂野 卓 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (20170863)
• 研究分担者: 篠崎 温彦 東京都臨床医学総合研究所, 部長 (20109945)
• キーワード: 神経細胞死 / グルタミン酸受容体 / 神経成長因子 / エンドセリン / 海馬

研究概要

海馬CA1領域選択的細胞死の機構を分子および回路の両面から解明した。ラットにNMDAを一側海馬CA1に微量注入すると注入側海馬から対側海馬および大脳皮質に広がるてんかん波が伝搬し、ラットはてんかん重積となり注入側CA1錘体細胞死が生じる。しかしより強力なNMDA受容体アゴニストであるL-CCG-IVで同様の実験を行うと、同様のてんかん波伝搬および症状を呈するが、CA1細胞死は両側に生じた。背側海馬交連および脳梁を切断して注入すると、てんかん波は抑制されCA1細胞死は両側で軽減した。今まで他にこのような報告は全くされておらず、海馬CA1領域選択的細胞死にはそのグルタミン酸受容体の差と海馬内およびその入出力系の興奮性回路の関わりが明らかとなった。一方NGFファミリー、すなわちBGF、BDNFおよびNT-3の高感度抗体を作成し、一過性脳虚血後の海馬での動態を検討した。その結果全てのNGFファミリータンパクが虚血後早期に発現上昇し、神経細胞死が生じる前の自己修復機転と考えられた。そこでNMDAおよびL-CCG-IVによるこの発現を現在検討中である。エンドセリンは初のET-1受容体アンタゴニストが最近開発され、まずそのイヌ脳血管攣縮抑制効果を現在検討しており、虚血性神経細胞死を抑制できるかどうかの研究へと向かう。

研究成果

• [文献書誌] 茂野 卓: "「脳の時代」をどう切り開くか? 分子とシステムの統合した理解を求めて" 治療学. 27. 250 (1993)
• [文献書誌] 茂野 卓: "エンドセリンと脳血管攣縮" 血管と内皮. 3. 443-450 (1993)
• [文献書誌] 茂野 卓: "脳浮腫の生化学" Clinical Neuroscience. 11. 1203-1206 (1993)
• [文献書誌] 茂野 卓: "脳虚血と神経細胞死" 実験医学. 11. 86-91 (1993)
• [文献書誌] 茂野 卓: "EDCF" 現代医療. 26. 1110-1117 (1994)
• [文献書誌] 茂野 卓: "グルタミン酸と神経細胞死" 実験医学. (5月発行). (1994)
• [文献書誌] 茂野 卓: "神経疾患の臨床 今日の論点(分担執筆) くも膜下出血の手術の基準と術前管理" 中外医学社, 344 (1993)
• [文献書誌] 茂野 卓: "脳虚血実験レビュー(分担執筆) 神経栄養因子" 文進堂(発行予定), (1994)