研究課題/領域番号 |
04454373
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研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
松井 寿夫 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (20173784)
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研究分担者 |
金森 昌彦 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (20204547)
市村 和徳 富山医科薬科大学, 附属病院, 助手 (90223114)
辻 陽雄 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (90009449)
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キーワード | tumor heterogeneity / epidermal growth factor / cell growth |
研究概要 |
腫瘍の細胞増殖や細胞癌化にはepidermal growth factor(EGF)とそのレセプター(EGFR)が重要な関連を持つとされるが、転移形成におけるEGFの役割は未だ明らかではない。本年度の研究において、マウス未分化肉腫高肺転移株(RCT(+))と低肺転移株(RCT(-))の細胞外マトリックス浸潤能をmatrigelとBoyden chamberを用いたIn vitro invasion assayにて比較検討したところ、浸潤細胞数(培養6時間)はRCT(-)が10±6個/fieldに対し、RCT(+)は32±9個/fieldと有意に高い浸潤能を有し、肺転移能と細胞外マトリックス浸潤能との相関が明らかとなった。さらに、各株細胞の細胞外マトリックス浸潤能を細胞外マトリックスへの接着能、分解能および遊走能の3過程で分析した。細胞外マトリックスへの接着能はRCT(+)がRCT(-)の約2倍で、TypeIV collagenolytic activity(培養8時間)はRCT(+)が1.34±0.16mg/10^4個に対してRCT(-)が0.44±0.12mg/10^4個であった。このように、分解能と接着能はRCT(+)がRCT(-)よりも有意に高いのに対し、遊走能には両株細胞間に有意差のないことを確認した。これらのことから、両株細胞間の浸潤能の違いは細胞外マトリックスに対する接着能と分解能の差に起因するものと考える。 RCT(+)の接着能と分解能はEGFによる増強作用を有した。この増強作用は高親和性EGFRに対するEGFの結合をブロックするレセプター抗体により抑制されたことから、EGFの浸潤能の増強作用に高親和性EGFRが関与することが示唆された。しかし、RCT(-)の浸潤能にはEGFによる影響はみられず、両株細胞の浸潤能におけるEGF効果の相違は高親和性EGFRの発現レベルと関連するものと考えられる。近年、乳癌や胃癌において、原発巣に比べて転移巣でEGFRの高発現がみられ、EGFRと転移との関連が報告されている。これまでの知見から、高率な高親和性EGFRの発現をみるRCT(+)細胞はin vivoにおいて血中EGFにより細胞外マトリックス浸潤能が亢進し、高転移性を獲得することが示唆される。本研究から、肺転移形成に対するEGFRをターゲットとした抗EGFR抗体による転移抑制実験を行うための基礎的データーが得られた。
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