研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)では,その病変の場は,滑膜にあり,自己免疫機序による滑膜炎,その増殖によるパンヌス形成,それらによる関節軟骨破壊がみられる。一方,変形性関節症(OA)では,関節軟骨の変性を基盤にした軟骨破壊,その破壊産物による二次的滑膜炎が病変の主体をなす。いずれも関節軟骨のマトリックス成分の破壊がみられ,その結果として,関節腔内に遊出される破壊産物による関節炎の恒久化を考慮しなければならない。こうした破壊産物は、疾患の病態を反映し早期診断にも利用されはじめた。RA滑膜,ならびにコラーゲン誘導関節炎マウス血清でコラーゲン分解酵素ペプチターゼの上昇,RA関節液でスロトメリシンの上昇またその抑制因子であるTIMPの上昇など明らかになった。ヒアルロン酸がエアーポーチ関節症モデルで軟骨変性の防止さらに抗炎症に働くことが証明された。関節液コンドロカルシンの測定から,この値がOAに特徴的に上昇しRAとの鑑別に有用であることがわかった。ビタミンC欠乏ラット,軟骨マトリックス欠損マウスの病態が明らかになり,これらが関節症の特種病態として有用であることがわかった。RAあるいはOA軟骨の破壊後の修復には周囲間葉系細胞の軟骨細胞への分化がみられる。滑膜細胞が骨形成因子存在下に軟骨細胞へと分化するin vitroの系は,破壊関節軟骨の修復状況をみるよい実験系であることがわかった。薬物治療の基礎として抗生物質含有ハイドロオキシアパタイトを作成,抗生物質のコントロールreleaseが可能となった。
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