人の赤血球よりカルパインIを精製し、これをカルシウムと共に家兎椎間板に注入した。レントゲン的には、注入後1週で椎間板の狭少化がみられ、8週で椎間板の高さは回復していた。組織学的には注入後1週では、全ての髄核内の細胞は変性し、髄核及び綿維輪のプロテオグリャンの減少がサフラニン-O染色で示された。注入後4週では髄核内細胞が若干回復したが、髄板及び綿維輪のプロテオグリャンの減少は注入後1週のものと変化はなかった。注入後8週では髄核内細胞はほぼ回復し、髄核及び綿維輪のプロテオグリャンも回復していた。カルパインIとともに、カルパスタチン(カルパインに対する特異的な抑制蛋白)を注入したものでは、組織学的変化は起こらなかったので、異種蛋白を家兎椎間板に注入したことや、注入液による圧力で椎間板の変化が起こったのではないと考えられる。生化学的には、髄核のプロテオグリャンを抽出し、椎間板の湿性重量との比でみてみると注入後1週では、プロテオグリャンは正常の52%に減少していた。注入後8週では正常の74%にまで回復していた。抽出したプロテオグリャンをクロマトグラフィー(セファロースCL-4B)にかけると、正常の髄核のプロテオグリャンのpeak kavが0.083であるのに対して注入後1週では0.21となりプロテオグリャンの小分子化が確認された。時と共に回復し注入後8週では、0.042となった。また抽出したプロテオグリャンをアガロースゲルの電気泳動にかけると注入後1週および4週のものでは正常のものより早い移動性があり、プロテオグリャンの小分子化がおこっていることが認められた。注入後8週では移動性は正常のものと同じで回復していることが認められた。
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