カルパインはカルシウム依存性の中性システインプロテアーゼである。カルパインは活性化される際のカルシウム濃度によって、IとIIとに分けられる。カルパインはin vitroにおいてプロテオグリカンを分解する作用をもつことが示されている。カルパインIはヒトの赤血球より精製することができるので、もし臨床的にもちいることができれば、化学的髄核融解(chemonucleolysis)の副作用であるアナフィラキシー反応を防げるのではないかと考え実験を行った。畑中らの方法でヒト赤血球から精製したカルパインIを40羽の家兎の椎間板に注入した。注入後の椎間板の変化を経時的に観察するため、1週、4週、8週でレントゲン的、組織学的、生化学的に検討した。その結果カルパインI注入後1週間でレントゲン上、椎間板の狭少化がおこった。組織学的には髄核と線維輪のプロテオグリカンが減少した。生化学的にはプロテオグリカンの小分子化が証明された。注入後8週間経過すると、椎間板はレントゲン的、組織学的にほぼ元通りに回復し、生化学的には80%の回復が認められた。以上のようにカルパインIは家兎椎間板のプロテオグリカンを分解することにより、実験的chemonucleolysisの効果をもつことがしめされた。chemonucleolysisをおこすのに十分な量のカルパインIは少量のヒト赤血球から精製できるので、将来自家血をもちいて臨床応用できる可能性があると考えられた。
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