本年度は昨年度までに得られた動物実験の結果と購入した特注電気刺激装置を利用し、脊髄刺激末梢筋記録電位の臨床応用を試みた。さらに経頭蓋磁気刺激による脊髄誘発電位による脊髄機能モニタリングを臨床例において試み、経頭蓋電気刺激による電位との比較も行った。またこれらの電位の伝導路と有用性についての動物実験をサルを用いて行った。 サルを用いた動物実験では経頭蓋磁気刺激ならびに電気刺激によって誘発される脊髄記録電位はいずれも大部分は運動路、とりわけ錐体路を下行する電位であるが、その一部には伝導速度の早い錐体外路、あるいは知覚線維を逆行性に伝導した電位が含まれていることが判明した。 脊髄電気刺激-末梢筋活動電位によるモニタリングを術前の神経障害が無いか、あっても筋力低下を呈していないような軽症の患者群で行った。連発電気刺激による吸入麻酔下でも比較的安定した筋電位の記録が可能で運動路の術中モニタリング法の一つとしての有用性を証明することが出来た。 他方経頭蓋磁気刺激による脊髄誘発電位を臨床例において記録したところ、ほぼ電気刺激と同等の電位が記録可能であった。刺激コイルの安定した保持など今後解決しなければならない問題は残すが、術中のモニタリング法としての有用性を証明することが出来た。さらに術後についても、麻酔覚醒後も引き続き磁気刺激による脊髄誘発電位をクモ膜下腔に留置した電極を利用して記録を行った。麻酔覚醒と共にI-波が多く出現して来るのが観察されたが、D-波を指標としてモニタリングが可能であると判断した。今後も引き続き臨床例を重ねて行く予定にしている。
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