安定した微弱な骨ひずみを発生させるために、コンピュータコントロールにより空気圧電磁弁で動作する空気シリンダ駆動装置を抜本的に改良した。この空気圧駆動式の骨加圧を行ったことで今年度は、電気雑音の少ない、かつ、比較的安定して再現性のある骨起電力を得ることが出来た。摘出した雑種成犬の大腿骨の両骨端を固定し骨端より全長の30%の部位を各空気圧で加圧(25gf〜400gf)した。各部位での起電位は銀・塩化銀電極、高入力インピーダンス増幅器と、A/D変換後ディジタル信号処理を施して測定した。その結果、4muVから3mVの圧刺激に同期した電位を得た。 摘出した形のままの骨においては、ある圧力での電位と加圧点からの距離との相関はなかった。しかし、起電力そのものはそれぞれの部位で加圧力と線形比例をなし、その相関係数は0.998±0.0014だった。 一方、試験骨は二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)を用いてその骨密度(BMD)を測定し、その骨幹の骨密度を比較用に得た。また、超音波発振素子と受信素子を骨幹上に一定の距離を置いて設置し、骨幹での超音波伝導速度を測定した。各骨での圧力-電位関係に当てはめた比例式の最大比例定数(最大勾配)とその骨密度の相関は指数関数で最も近似でき、その相関係数は0.870であった。一方、各骨の最大勾配と伝搬速度の相関はやはり指数関数で最も近似でき、その相関係数は、0.928だった。すなわち、骨起電力は骨塩量との相関よりも超音波伝搬速度との相関が高い値を示した。結果的には、骨塩量が少ないほど電位変化は大きく、骨塩量の多いほど加圧力が変化しても電位変化が少ない傾向を示した。
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