研究概要 |
本年度は成ラット脊髄スライス標本を用いた脊髄膠様質細胞,側角細胞からの細胞内記録、および、in vivoでの腰部脊髄における分節性脊髄誘発電位、後根電位、側角細胞活動の記録を行い、それぞれ後根刺激、下肢侵害電気刺激で誘発される反応を観察し、正常ラット、RSDモデルラットにおける各反応の差異について検討した。 正常ラットでは、後根から膠様質ニューロンへの単シナプス性入力はAδとCfiberに限られており、Aα/β fiberからの単シナプス性入力は検出されず、少数の膠様質ニューロンでAα/β fiberからの多シナプス性入力が認められるのみであった。一方、RSDモデルラットではAδとC fiberの単シナプス性入力に加え、多数の膠様質ニューロンでAα/β fiberからの多シナプス性入力が認められ、刺激後のrepetitive firingも観察された。また、少数ではあるが、Aα/β fiberからの単シナプス性入力によると考えられる電位が検出された。後根刺激による側角ニューロンに生じる反応は、正常ラットではAδ fiberに興奮をもたらす刺激強度以上では多シナプス性のfast EPSPとそれに続くslow EPSP(5-10s)が観察された。RSDラットではAδ fiberに興奮をもたらす刺激強度以下でも興奮性応答が認められた。 腰部脊髄L4/5背面から記録した異分節性脊髄誘発電位、後根電位、側角ニューロン活動については、約半数のRSDモデルラットにおいて分節性脊髄誘発電位のP1成分には有意の変化は認められなかったが、N1,P2成分には振幅の増加、P2成分の持続時間の延長が観察された.後根電位も同様の増強、延長を示した.誘発電位異常増強の認められるRSDモデルラットでは非侵害刺激と思われる弱い刺激強度によっても侵害刺激と同様の発火頻度増加が認められた。 以上より、RSDモデルラットでは膠様質及び側角ニューロン活動の異常増強現象が存在すること、また、この異常増強現象には脊髄より上位の中枢が関与していることも示唆された。
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