研究概要 |
(1)手術侵襲と免疫変動;開腹・開胸等の大手術において,四股や眼、耳などの小手術に比較してより大なる免疫変動が認められた。 (2)麻酔法と免疫変動;小手術においては麻酔法の相違と無関係で、殆んど変動は認められない。大手術においては、吸入麻酔及びNLA単独もしくは、吸入麻酔併用NLA麻酔群のいずれの場合もサプレッサーリンパ球の増加とインデューサーリンパ球の減少を中心とした免疫抑制への変移が認められた。しかし硬膜外麻酔を併用した全身麻酔群においてはこの様な変動は抑制されていた。 (3)内分泌系の変化;大手術,小手術群共に術中に血中コルチゾールの増加が認められたが,大手術群では有意に高く,特に活性を持つ,フリーコハチゾールの増加が著しかった。これらは上記のいずれの麻酔法においても,ほぼ一様な動きを示した。 (4)最近の報告より,中枢神経系,内分泌系,免疫系は各種神経や,サイトカインを含むメディエーターを介し相互に影響を及ぼし合い変動を起こすことが明らかにされつつある。また疼痛刺激が痛みストレスとしてリンパ球の機能を中心として免疫系に影響を及ぼすとされている。もし術中に術野から求心的に送られる疼痛刺激を切断すれば上記の免疫及び内分泌変動がどう変化するかを判断するにあたり,開腹手術時の内臓神経ブロックを併用する全身麻酔を選択した。これにより免疫変動,内分泌変動共にその変化は僅かとなり,術中の手術操作による疼痛がストレスとして求心性に作用すると考えられた。 (5)この為,これらの機構解明にあたり,疼痛と交感神経系反応等の基礎的反応を人において把握していく必要に迫られ,幾つかの知見を得た。 (6)次年度は,むしろ免疫変動を制御する方法より逆質的に免疫中枢もしくはそれに連なる機構の解明にあたりたい。
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