研究概要 |
ケタミン麻酔されたビーグル犬において赤血球に^<99m>Tcを標識し、頭部(主として脳)、胸腔臓器、肝、脾、大腿骨格筋部からの放射能と、それぞれの臓器血液のヘマトクリット値とを測定、経時的にこれらの臓器血液量の変動を観察した。また遊離頸動脈からの放射能と同部ヘマトクリット値から循環血液量の変化を観察した。 間欠的陽圧呼吸の呼気終末に陽圧(PEEP)を5,10,15cmH_2Oと負荷するにしたがって動脈血圧は低下し、循環血液量と胸部の血液量は減少、反対に肝部、脾部、大腿部の血液量は増加した。とくに肝部における増加率が最大であった。 ここでHolborn社製空気駆血帯を動物の下腹部に装着、空気圧によって動物腹部を圧迫し、動物の腹腔内圧(肝下面に留置した多孔カプセルに接続されたチューブの一端を腹腔外に出して測定)を10,20cmH_2Oと上昇させたところ、上述のPEEP負荷にともなう循環血液量減少と大腿骨格筋の血液量の増加とが認められなくなった。またPEEPによる胸部の血液量減少、肝部、ならびに脾部血液量の増加は腹腔内圧20cmH_2Oでそれぞれ抑制された。一方頭部血液量はPEEPの影響、腹腔内圧上昇の影響もまた腹腔内圧上昇時のPEEPの影響もなんら受けることはなかった。 したがってPEEP時における腹腔内圧負荷はPEEPによる循環血液量の減少を抑制し、かつその各臓器への分布を正常に近づけることに有効であった。しかしその有効効率から推定して10cmH_2O程度が適切であるように思われた。
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