研究概要 |
われわれのこれまでの検討から、腎細胞癌ではIL-6が産生されており、この産生との転移出現とが平行する所見が得られていた(Journal of Urology,148,1778,1992)。一方、種々のサイトカインが血管内皮細胞上の接着分子の発現に影響することが知られている。そこで、今年度は炎症性サイトカインであるIL-1,TNF-alpha,IL-6が血管内皮細胞上の接着分子発現にどのような影響を与えるのか、またこの結果が腎細胞癌のin vitro浸潤能にどのような影響を与えるのかを検討した。 上記のサイトカインで処理した血管内皮細胞をmatrigelに重層させたin vitro浸潤能測定系を用い、腎細胞癌のin vitro浸潤を検討するといずれのサイトカインの場合も浸潤癌細胞数が明らかに増加した。上記のサイトカインは、【.encircled1.】血管内皮細胞と腎細胞癌細胞の接着を促進したこと、【.encircled2.】一方、腎細胞癌の遊走能およびtypeIV collagenolysisには影響を全く与えなかった。事実、FACS scanでは腎細胞癌細胞上にVLA-4が発現していたが、サイトカインで処理した血管内皮細胞上にはそのligandであるVCAM-1の有意発現が認められた。したがって、サイトカインで血管内皮細胞を処理した場合に腎細胞癌の浸潤能が増強したのは、サイトカインによるJ血管内皮細胞と腎細胞癌との接着が増強したためと考えられた。この結果は、臨床的にIL-6高値の腎細胞癌に転移傾向が強いという事実を一部裏付けるものと考えられた。
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