研究概要 |
膀胱癌浸潤性の客観的指標を探るためにはまず膀胱癌培養細胞を使用した各種悪性度・浸潤性因子の解析を試みた。これら解析における基本はフローサイトメトリーおよびレーザー・サイトメトリーを使用し、異なる悪性度を有するヒト膀胱癌培養装胞株KU-7,KU-1,T24,NBT-2の4種の細胞株をモデルとして、その増殖性と腫瘍の浸潤性を比較した。増殖性の指標としては、bromodeoxyuridine(BrdU),proliferating cell nuclear antigen(PCNA),Ki-67に注目し、その染色性あるいは染色の異同を比較検討した。増殖動態解析においてはS期細胞の選択的同定にはBrdUが最も正確であり、一方PCNA,Ki-67はG1期あるいは分裂期の一部もその陽性反応を示すことが判明した。 これら培養細胞をHoechst33342により生細胞のまま染色し、その染色性によりフローサイトメトリーを用いてG0/G1およびnon-G0/G1細胞に選別し、これら細胞群における増殖性を検討した(第二回泌尿器科細胞解析研究会,1993年2月)。 さらに、手術的に摘出した臨床検体に対するBrdUのin vitro標識による各腫瘍のDNA/BrdU二重解析においては、high-gradeの膀胱癌において、DNA ane-uploidyが高頻度に出現し高いBrdU標識率が得られた。 これを患者の予後と対比すると、BrdU標識率10%以下と10%以上の腫瘍に分けてその3年生存率を検討すると、低BrdU標識腫瘍は98%、高BrdU標識腫瘍は42.9%とBrdU標識率の高い腫瘍において予後が極めて不良であることが示された(J.Urol.,印刷中)。 以上の結果よりbromodeoxyuridineによる細胞増殖性の検討は膀胱癌の客観的悪性度評価方法として臨床応用可能であることが示された。
|