研究概要 |
1)腎細胞癌(RCC)患者に対するインターフェロン(IFN-α,IFN-γ)の宿主免疫系を介した効果を検討する目的で,IFN-α、IFN-γおよび無投与群の3症例群において,手術時採取したRCC原発巣,および所属リンパ節を用いて,名種免疫担当細胞のmonoclonal antibodyによる免疫組織化学染色を行い,IFN-αまたはIFN-γの宿主免疫系を介した作用を検討した。その結果,IFN-αは腫瘍細胞膜上に発現した主要組織適合抗原(MHC)class Iの発現を高め、かつ腫瘍浸潤リンパ球(TIL)-subsetのうち,CD3,CD4,T-cell reptor(TCR)-αβ chain陽性の免疫担当細胞の腫瘍内浸潤を高めたが,所属リンパ節リンパ球(RLNL)-subsetには有意の効果は及ぼさなかった。一方,IFN-γはMHC class IIの発現上昇と,TIL-subsetのうち,CD3,CD8,TCR-αβ chain陽性の免疫担当細胞の腫瘍内浸潤を高める効果が明らかとなった。また,RLNL-subsetでは,CD_2O陽性細胞の浸潤比率上昇が所属リンパ節において観察された。従って、RCC患者に対するIFN-αとIFN-γは宿主免疫系を介しての作用が大きく異なることが示唆され,同時に腫瘍細胞に対する免疫的効果CMMC発現)も大きく異なることが示唆された。2)転移を有するRCC12例に対する,インターロイキン-2(IL-2)の抗腫瘍効果増強目的で、転移巣に対する局所放射線照射併用IL-2療法を行った結果,全体としての奏効率は25%で、特にsoft tissue mass(後腹膜リンパ節,腎床,胸骨前面転移巣)に対する効果が優れていることが明らかとなった。さらに本併用療法の免疫的効果を検討する目的で、経時的にPBL-subsetを解析した結果,本併用療法により有効であった症例は,CD4およびCD16陽性リンパ球の関与が示唆された。本併用療法の治療効果は同時に行った,器官培養法による検討や,マウス自然発生腎癌モデルを用いた基礎的検討からも,相加以上の効果が得られたことからも,その有用性が実証された。
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