研究概要 |
1.免疫担当細胞からみた腎細胞癌の生物学的特性に関する検討:腎細胞癌の予後決定因子であるstageおよびgradeと宿主免疫能の関連について検討した結果、low stage/low grade症例では、MHC class I抗原の発現率が高く、TIL‐subsetでは、low stage/low grade症例はCD4陽性細胞の浸潤化率が高かった。一方、所属リンパ節リンパ球(RLNL)‐subsetの検討結果、リンパ節転移を認めなかった症例は、転移を伴った症例に比較して、CD3(CD4)陽性細胞と、TCR‐alpha/beta chainの浸潤化率が高かった。従って、MHC発現率、TIL‐CD4陽性細胞およびTCR‐alpha/beta chainが腎細胞癌の予後決定因子と関連した重要な免疫学的markerとなる結果であった。 2.TIL‐patternからみた宿主免疫能の検討:TIL‐patternを5型に分類し、MHC発現率、TIL‐subset浸潤比率との関連、さらに予後との関連を検討した結果、腫瘍細胞内に特異的に浸潤を認めるTIL‐patternが、腫瘍を取り囲むように浸潤しているTIL‐patternや浸潤をほとんど認めない例に比較して、MHC class II抗原、TIL浸潤比率は有意に高く、かつ予後も良好である結果であった。 3.腎細胞癌のMHC population studyからみた疾患感受性抗原の同定:未治療腎細胞癌93例の各MHC抗原の発現率を、健常日本人のそれと比較検討した結果、腎細胞癌に有意に発現率の高い抗原は認められなかったが、逆にA26,B35,Bw48,Bw60,DRw6,DRw8,DR9は腎細胞癌が有意に発現率が低かった。またhaplotypeでは、A24‐Bw52‐Dr2,A24‐B7‐Dr1,A2‐B35‐DR4が腎細胞癌に有意に多く発現していた。従って、これら発現率の有意に低かった7抗原は腎細胞癌の腫瘍関連抗原および宿主免疫担当細胞との親和性の高いMHC抗原である可能性が示唆された。 4.進行性腎細胞癌に対するインターロイキン-2(IL‐2)の効果増強に関する検討:(1)摘出腎細胞癌を用いた器官培養法によるIL‐2併用放射線療法の殺細胞能が、IL‐2単独、または放射線単独療法に比較して相乗効果を有することが明かとなった。(2)マウス自然発生腎細胞癌株(RC‐2)を用いたIL‐2併用放射線療法により、IL‐2併用放射線療法が、腫瘍増殖能、組織学的変性の程度およびマウスの延命効果のいずれもより効果的治療成績を示した。以上の基礎的検討結果を踏まえて、(3)進行性腎細胞癌に対しIL‐2併用放射線療法の治療を12例に試みた結果、1例のCR、2例のPR(奏効率:25%)症例を認めた。特に、本併用療法は軟部組織転移例に優れた治療成績を示した。
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