双胎胎児の心拍数を両児同時に記録してみると、一時的にではあるが胎児心拍数が非常に似た変動を示す部分がよく観察される。この同時記録された双胎両児の心拍数時系列をもとにその相互相関を解析し、双胎間の心拍数変動の関連性について検討すると共に、双胎妊娠管理上重要な要素である双胎循環系の生理の解明が本研究の目的の一つである。 筑波大学附属病院において双胎妊婦の同意を得た上、入院後毎週データの収録を行った。現在、収録されたデータ数は12症例の延ベ34件である。一回の収録は0.2秒のサンプリングで25分間である。心拍数時系列データ収録後、記録が安定していることを目視により指定した区間において、時間差(τ)が±60秒の範囲における相互相関関数を求めた。 相互相関係数の最大値(ρ_<max>)をみると、ρ_<max>>0.20となるピークをもつ症例が多数あり、ピークを示す時間差は|τ|≦15秒となっていることが多かった。一方、相互に独立した心拍数時系列データをシミュレーションにより作成し相互相関について解析したところ、相互相関関数には特にピークが存在せずまたその値も0.05以下と低かった。以上の結果より双胎胎児間の心拍数は全く独立に変動しているとはいい難く、相互に何らかの影響が存在していることが示唆された。 また、1絨毛膜性双胎と2絨毛膜性双胎の胎盤を通じた循環系に差異を生じる可能性が知られているが、現在までの収録データの解析では2絨毛膜性で双胎間の循環が独立している場合でも両児の心拍数変動に相関が認められた。今後、絨毛膜性の相違や在胎週数の進行による相互相関の変動について更に解析を進める予定である。
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