研究概要 |
双胎両児の心拍数を同時記録してみると、非常に類似した変動を示す部分がよく観察される。この心拍数変動の一致性についての報告は散見されるが、我々は同時記録された双胎両児の心拍数時系列をもとにその相互相関を解析し、双胎間の心拍数変動の関連性について定量的に検討を加えることが本研究の目的である。 筑波大学附属病院受診中の双胎妊婦に対してその同意を得た上、双胎用分娩監視装置(TOITU,MT-430)を用いてNSTを行い、心拍数出力のデジタル化されたものをパーソナルコンピュータに収録した。一回の収録は0.2秒のサンプリング間隔で25分間である。心拍数時系列データ収録後、active phase及びresting phaseと視認される区間において、それぞれ時間差(γ)が±60秒の範囲における相互相関関数(ρ(γ))を求めた。 昨年度より収録された症例は13症例のべ55件となった。妊娠週数は25週〜38週であった。胎児の胎内動態をactive phaseとresting phaseに分けて観察してみたところ、active phaseで相互相関係数の最大値(ρ_<max>)をみると、ほとんどの症例でρ_<max>>0.20となるピークがあり、その平均と標準偏差は0.433±0.164であった。また、ピークの遅れ時間は12.44±12.35秒であった。これに対し、resting phaseでは、ρ_<max>は0.191±0.215であり、必ずしも特徴的なピークを示さないものが多かった。また、active phaseについて相互スペクトルを求めると、3.0〜5.0cycle/min.の区間に小さなピークが認められた。なお、1絨毛膜性双胎と2絨毛膜性双胎とでは、双胎間の心伯数相互相関に明らかな差異は認められなかった。 双胎両児の心拍数には絨毛膜数を問わず部分的に高い相関関係を示す時相があり、両児に周期の近似したLTVが存在することが示唆された。
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