研究概要 |
1.妊娠25‐32週の無脳児12例(無脳児群)と正常胎児165例(対照群)を対象に、確率密度図を用いて、無脳児における心拍数変動の妊娠の進行に伴う特徴と心拍数制御系の発達過程との関連について検討した。無脳児群ならびに対照群の各々の胎児から求めた確率密度図と対応する妊娠週数の基準確率密度図の差分から不一致率を求め、無脳児群の各々の症例の不一致率と対照群のそれとの相違を解析した。その結果、妊娠25‐26週から27‐28週では、頚髄まで有する4例では不一致率が対照群より有意に高値を示したが、延髄まで存在する4例は対照群と有意な差を認めなかった。妊娠29‐30週から31‐32週では、延髄まで存在する4例においても、不一致率は対照群より有意に高値を示した。以上より、胎児の心拍数制御には妊娠27‐28週と妊娠29‐30週の間に変極点が存在し、それより早い妊娠の期間では延髄が、またそれ以降の期間においては延髄を含め上位の中枢が関与していることが分かった。 2.妊娠23‐40週の正常胎児743例を対象に、胎児健常性の評価に必要な最少心拍数を明らかにすることを試みた。心拍数データを2妊娠週数毎に9つに分割した後、各データセットから一様乱数を用いて50個、100個、〓と漸次増加させて心拍数値を無作為抽出し、各抽出数における確率密度図を作製した。各妊娠期間毎に、作製した確率密度図と対応する妊娠週数の基準確率密度図の相違を不一致率を用いて算出した。その結果、全ての妊娠期間において、抽出数が増加するにつれて不一致率は低下するものの、9,000‐10,000拍を変極点として、それ以上増加しても、不一致率は25‐33%とほぼ一定であった。以上より、妊娠23‐40週において、妊娠週数とは関係なく、胎児を評価するのに必要な最少の心拍数は9,000‐10,000拍であること、一群の心拍数変動には生物学的に異なる2つの要素が存在し、その割合は25‐33%がlong‐term variability、67‐75%がbeat‐to‐beat variabilityであることが分かった。
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