研究概要 |
〓.妊娠・産褥期の授乳婦・非授乳婦に関する臨床的研究 (1)妊娠・授乳が骨量に及ぼす影響:妊婦30名(授乳群16名,非授乳群14名)を対象に妊娠中から産後2年まで橈骨骨量のLongitudinal studyを行った。妊娠中に骨量の変動はなかった。授乳により骨量は有意に減少し、骨量減少率は、授乳群で産褥1カ月-2.01%、6カ月後-5.5%、1年後-8.3%、産褥2年後で-5.4%であった。非授乳群は産後2年まで骨量に大きな変動は認めなかった。 (2)出産回数・授乳期間の骨量に及ぼす影響:Retrospective studyとして、24から77歳までの婦人776名を対象に、出産児数別(0,1,2,3,4,5および6児以上)と授乳期間別(合計授乳期間)に加齢に伴う骨量推移曲線を重回帰分析により求め、それぞれの影響を比較した。その結果、出産児数が増えれば、加齢に伴う骨量推移曲線の基準値が低下する傾向がみられ、0児と5児以上で有意差(P<0.05)を認めた。しかし授乳期間との関係が最も明確で、授乳の長期化に伴い骨量が有意に減少した(P<0.05)。 以上の結果から、出産回数と授乳期間は骨量に長期的な影響を及ぼし、その中で授乳期間がより大きな要因であることが判明した。 〓.妊娠・産褥期の授乳婦・非授乳婦に関する基礎的研究 (1)活性型ビタミンDの骨量減少抑制効果:授乳ラットに活性型ビタミンDを投与し、骨量減少抑制効果をみた。その結果、ビタミンDの投与は骨量減少を抑制し(授乳期に10%の骨量減少)、無治療群(授乳期に23%の骨量減少)に比べ有意に(P<0.05)骨量減少が抑制された。 (2)蛋白分解酵素阻害剤(E-64)の骨量減少抑制効果:OVXラットにE-64を投与(プラセボ,4mg/100g/.B.W,8mg,16mgの4群)し、骨量減少抑制効果をみた。その結果、プラセボと4mg群で骨量減少を認めたが、8mgと16mg群では骨量減少を全く認めなかった。
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