研究概要 |
1.胎盤絨毛細胞、脱落膜細胞における成長因子(IGF-I,EGF)細胞内代謝の解明 胎盤絨毛細胞にIGF-Iを添加すると^3H-glycineの取り込みが時間および用量依存性に促進されたが、EGFではその作用はみられなかった。IGF-Iは非代謝性アミノ酸であるaminoisobutyric acid(AIB)の絨毛細胞への取り込みも促進した。絨毛細胞を^3H-AIBで飽和しておき、IGF-Iを添加すると培養液中への^3H-AIBの放出が促進され、これはIGF-Iのアミノ酸取り込み促進と同じく時間および用量依存性であった。IGF-Iは脱落膜細胞からのIGF結合蛋白(IGFBP-1)分泌を用量依存性に抑制したが、EGFにこの作用はみられなかった。 2.IGFの結合蛋白の母児における発現 Ligand blotによる母体のIGF結合蛋白の解析では、妊娠初期より結合蛋白のうちIGFBP-3,IGFBP-2,IGFBO-4の活性が著しく減少し、これは母体血中に増加したIGF結合蛋白に対するプロテアーゼ活性の増加の為と考えられた。脱落膜細胞培養上清と非妊娠血清をインキュベートすると血清中IGF結合蛋白活性が減少することより、母体血中に増加したプロテアーゼ活性の一部は脱落膜由来と考えられた。臍帯血IGF結合蛋白は体内発育遅延児ではIGFBP-1とIGFBP-2が増加し、反対に巨大児ではIGFBP-1の減少およびIGFBP-3の増加がみられ、胎児の発育状態にIGF結合蛋白の動態が密接に関与していることが示唆された。 3.トロンボモジュリン、エンドセリンの発現 胎盤絨毛細胞と血管内皮細胞との類似性を検討するために両者を分離培養した。凝固蛋白トロンビン(T)負荷時に培養上清の抗凝固蛋白トロンボモジュリン(TM)血管収縮物質エンドセリン(ET)をEIA法で測定した。T負荷で両細胞ともTMは減少したがETでは内皮細胞で大量のET放出をみたが絨毛細胞ではET放出はなかった。以上より絨毛細胞は内皮細胞同様、抗凝固能を具備するが、血管収縮能は有しないことがわかった。 4.ダブルビームドプラー超音波測定装置による血管変移計測 成人を対象に血管内圧測定時、測定部位毎に血管変移を測定し、腹部大動脈・内頸動脈・上腕動脈等について内圧曲線とを比較し、相似形となることを確認した。次いで胎児動脈から週数に対応して血管変移を測定し、血圧の胎児発育に伴う変動を観察した。
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