研究課題/領域番号 |
04454428
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小池 吉郎 山形大学, 医学部, 教授 (70018357)
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研究分担者 |
戸島 均 山形大学, 医学部, 助手 (30167530)
青柳 優 山形大学, 医学部, 助教授 (40107181)
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キーワード | 顔面表情運動 / 磁気刺激 / 顔面神経 / 誘発誘発筋電図 |
研究概要 |
顔面神経障害における磁気刺激誘発筋電位を臨床応用する目的でニホンザルにて基礎的検討を行った。気管内挿管、フローセン麻酔下に前頭葉運動野、脳幹部、内耳道部の顔面神経を磁気刺激し、口輪筋から誘発電位を記録しようとしたが、再現性のある電位は、耳後部を磁気刺激した場合においてのみ、2〜6mVの複合筋活動電位が刺激側口輪筋にのみ得られた。さらにこの方法によって、聴覚やその他の神経機構に合併症を起こすことは無いことが分かった。磁気刺激誘発筋電図を臨床応用する目的からすれば、全身麻酔下のニホンザルは不適当であると考えられた。そこで、ヒトの被検者を募り検討した。 外耳道より6cm上方、さらに3cm後方を円形コイルの中心とし、コイルに1000V以上の電圧で電流を通電すると、脳幹より末梢側、おそらく内耳道内顔面神経を最大域値上で磁気刺激することが分かった。これにより、刺激側口輪筋より潜時4〜5msec,振幅2〜6mVの再現性のある複合筋活動電位が得られた。一方、人に軽く口輪筋を収縮するように命じた状態で前頭葉運動野を磁気刺激すると、反対側口輪筋に再現性のある約11msecの潜時をもつ電位と、両側性に35〜50msecの潜時をもつ電位が記録できた。そこで、側頭骨内顔面神経麻痺患者98例に応用したところ、これら患側の誘発電位の振幅は、軽度の顔面神経障害でも著しく減少した。さらに、視床内包出血や脳幹多発性硬化症による顔面神経麻痺患者では、脳幹より末梢側磁気刺激では患側誘発電位は正常であるのに対し、前頭葉運動野刺激では誘発電位が様々に障害された。この事は、従来の検査法と比較すると、その神経伝導障害部位を極めて明確に示すことができ得た。このように、顔面神経麻痺患者に対しては、磁気刺激法は臨床的にも重要な価値をもつと考えられた。さらに、パーキンソン病や顔面痙攣性疾患などの表情運動制御機構の障害患者にもその診断価値を検討中である。
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