研究概要 |
糖尿病網膜症による失明原因の大きな要因の1つに黄斑症がある。我々が開発した黄斑部局所ERGはa波,b波,律動様小波(OP)の記録が可能であり、これらの分析により、黄斑部病態の層別診断が可能となる。糖尿病性黄斑症の中で頻度が多く、また、将来種々の治療が可能となりうる糖尿病性黄斑浮腫に関して黄斑部局所ERGを用いて、その病態生理を探索した。 糖尿病性黄斑浮腫の黄斑部局所ERGを分析する前に、その病態生理が比較的単純な黄斑疾患の局所ERGを分析し、この結果を糖尿病性黄斑浮腫の解釈に役立たせようとした。 網膜外層の浮腫である中心性漿液性脈絡網膜症では視力が良好な時期でも黄斑部局所ERGのa波,b波,OPはすべて強い減弱を示した。網膜内層疾患ではX染色体先天網膜分離症に関しての研究を行った。本症の黄斑部局所ERGでは、視細胞起源のa波は良好に記録され網膜内層起源のb波,OPに全例強い異常がみられた。糖尿病性黄斑浮腫と類似した形態的異常を示すと考えられる、白内障術後に生ずる類のう胞様黄斑浮腫では初期にはOP,b波、晩期にはa波に異常が波及した。これらの結果より網膜内層の浮腫では主にOP,b波の異常が生じ、病変が視細胞に及ぶとa波にも異常が生ずるものと考えられた。糖尿病性黄斑浮腫の極めて早期にはOPのみの異常がみられたが多くの症例ではa波にも異常がみられ、糖尿病性黄斑浮腫では内層のみならず外層にも異常が波及しているものと考えられた。
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