研究概要 |
平成5年度に得た成果は以下のとおりである。(1)安定同位元素(^<15>N)によるアセタゾラミド(acetazolamide;2-acetamido-1,3,4-thiadiazole-5-sulfonamide)の標識。250mgの^<15>N-potassium thiocyanateより出発して32mgの[acetamido-^<15>N]-acetazolamideを得た。質量分析による分子量の測定、質量スペクトルの解析、元素組成の計算、融点測定、高速液体クロマトグラフの保持時間の測定によって、化学構造の確認と^<15>N標識位置の確認をした。(2)新しいスルフォンアミドの合成。われわれの作業仮説によって炭酸脱水酵素IIのHis-64(活性中心の入口にあるヒスチジン残基)と相互作用をしないと考えられるチアジアゾールスルフォンアミド(2-ethyl-1,3,4-thiadiazole-5-sulfonamide)の合成を行った。質量スペクトルと分子量測定とから生成物の確認を行った。しかし、この合成方法では収率が極めて悪いので、次年度にこの方法の改良を試みる。(3)核磁気共鳴の測定。昨年度、調製法と精製法とを確立し、その系で得た^<15>Nと^<13>Cとで標識したヒト炭酸脱水酵素IIと^<15>Nのみで標識したものについて、HSQC法による2次元の核磁気共鳴スペクトルの測定を行った。この測定でHis-64に由来すると考えられる核磁気共鳴シグナルを捕捉したが、断定までには到らなかった。この理由は、現時点でははっきりしない。現在、His-64を遺伝子操作でアラニンに置換した酵素を作成中であり、この変異酵素のシグナルとの比較によって、最終的にHis-64に由来するシグナルの同定を行う予定である。
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