研究概要 |
(1)His64に由来するNMRシグナルの同定を二重標識法で行った。昨年度確立した方法によって、ヒト炭酸脱水酵素IIを^<13>Cや^<15>Nで標識した。ヒト炭酸脱水酵素IIは12個のヒスチジン残基を持つ。このうち、眼圧降下剤と相互作用していると予想しているHis64に隣接しているのはGly63で他の11個のヒスチジン残基はグリシンに隣接していない。この点に着目し、[α-^<15>N]Hisと[1-^<13>C]Clyとを用いて酵素を標識した。この酵素について多次元NMR法の1つである^1N-^<15>N HSQCを測定した。その結果、11個のシングレットのシグナルと1個のダブレットのシグナルを観測した。Gly-Hisとつながっているのは、63残基目と64残基目のみであるので、ダブレットのシグナルはHis-64に由来するものと結論し、同定した。 (2)ヒスチジン残基の側鎖に由来する^1H、^<13>C-NMRシグナルの観測を行った。ヒスチジンの側鎖を^<13>Cで標識し、pHをいろいろ変えて、^1H-^<13>C HSQCを測定した。われわれは、本プロジェクトに移行する前に、^1HのみのNMR測定を行っていた。この測定では、全プロトンを測定していた(緩和時間の差を利用した測定法で目的のシグナルを求めた)が、今回の測定では、ヒスチジンの側鎖に由来するシグナルのみを観測したので、より正確な測定を行うことができた。 (3)酵素とアセタゾラミドとの複合体のNMR測定は、現在進行中である。 (4)His-64と相互作用をしない2-methyl-1,3,4-thiadiazole-5-sulfonamideの合成を行い酵素阻害作用と眼圧降下作用とを調べた。酵素阻害作用は、アセタゾラミドのアセチル基を除いた2-amino-1,3,4-thiadiazole-5-sulfonamideとほぼ同じであった。眼圧降下作用も同様であった。この結果は、アセタゾラミドがHis64と相互作用しているというわれわれの作業仮説と矛盾しない。
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