本研究の基本となる口腔粘膜原発扁平上皮癌由来の細胞株の樹立については、すでに細胞株を樹立し、MISK81と命名し、その細胞学的性状などを第34回、および35回歯科基礎医学会において発表した。この細胞株の染色体分析では明らかなaneuploidyを示し、また癌細胞の浸潤能に深い関連性を有するカテプシンDを培養上清中に分泌していた。同時にこの細胞株は高濃度のgranulocyte coloney stimulating factor(G‐CSF)およびinterleukin‐3(IL‐3)を産出していることをstem cell assayおよびELIZA法により証明した。これらのデータをまとめ論文作成中である。またMISK81を抗原として、特に悪性細胞への形質転換に関連した物質や癌細胞表面の接着分子に対する抗体の作製を現在行っている。また、ヌードマウス舌へ移植し、転移巣の細胞を再培養し、これを繰り返すことにより、より転移能の高いクローンの樹立を行っている。 癌細胞の生物学的特性については、原発性胃癌における各種カテプシンの局在を免疫組織化学的に検索し、これらの酵素が浸潤先端部の癌細胞に強く発現されていることから癌細胞の局所浸潤に深く関与していることを第51回日本癌学会総会において発表し、現在論文作成中である。 PCNAとAgNORsについては、口腔の前癌病変と比較対照するために、子宮頸部における異型上皮や上皮内癌における検索をおこない、現在までに組織学的な異型度の増加とPCNA陽性細胞の出現率との間に密接な関係があることを明らかにし、Human Pathologyに印刷中である。口腔粘膜の上皮性異形成についてはPCNAとAgNORs染色法より検索した結果、高度異形成に関連した組織学的所見を明らかにし、現在論文作成中である。 癌細胞の増殖に関与する因子として、特に上皮性癌細胞に密接な関係があるEGF receptorについて、PCR法により、oligonucleotideを作製しdigoxygeninでラベルののち、in situ hybridization法により、口腔扁平上皮癌の細胞内に局在するmessenger RNAの検出を行っている。
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