研究概要 |
根管起因の閉鎖性の膿瘍6症例から内容物を採取し,細菌の分離と同定を行った結果、3症例はPrevotellaを,1症例はFusobacteriumを主要構成菌とする症例が認められた。生化学的症状とDNA-DNAハイブリダイゼイションの結果から同定すると,Prevotellaを主体とする症例からは169株のP.intermediaが,Fusobacteriumを主体とする症例からは,F.nucleatum56株,P.intermedia14株およびPorphyromonasgingivalis11株が得られ、昨年同定したP.intermedia155株を併せて病原因子の検討を行った。 前年および今年得たPrevotellaとPorphyromonasからは、beta-lactamase,lecitinase,collagenase、lipaseおよびtrypsinなどの活性が検出された。酢酸ウランを用いたネガティブ染色後に,細菌表層を観察すると,線毛がPrevotellaとPorphyromonasで頻繁に観察されたが,Fusobacteriumでは線毛は観察されなかった。両菌の線毛は数種のタイプに分類でき,比較的長くて幅の広い線毛は性線毛の可能性があり,薬剤耐性との関連で特に注目している。Prevotella intermediaが口腔細菌の中では薬剤耐性化しやすいことは既に研究者らは明らかにしている。したがって、本菌の口腔における耐性因子の検出と伝達は口腔感染症の治療上大変興味のあるところである。供試菌からプラスミドとファージの検出を行うと,Prevotellaの約三分の一の菌株で認められた。この事実からファージによる耐性因子の導入および接合による耐性因子の伝達が考えられる。耐性化したPrevotellaの耐性菌株からDNAを分離し,形質転換を行える可能性もあり,得たP.intermediaは重要な研究材料となるものと期待している。
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