研究概要 |
本年度は、in vivoにおいては、血管新生が骨代謝にどのような影響を与えるかを検討する目的で、in vivoに適した血管新生抑制物質の探索を行った。従来の血管新生抑制剤はチロシンキナーゼの阻害によるものがほとんどで、骨代謝系におけるチロシンキナーゼの重要性を考えると、本実験の目的にはそぐわなかった。そこで、チロシンキナーゼに作用がなく、血管新生を抑制する物質の探索を行った。ビタミンDやA(レチノイン酸)の誘導体や抗生物質をまずスクリーニングしたが、レチノイン酸の誘導体であるRe80,Am580、Am80に血管新生抑制効果があることが明かとなった。レチノイン酸は、骨芽細胞分化に促進的に働くことは知られているが、in vitroの実験系においては骨吸収の促進作用や骨形成抑制作用は認められていない。そこで、この薬剤を用いてin vivo系での骨形成が抑制される可能性について検討した。まず、本薬剤の毒性を調べたところ、本薬剤には薬効量の1000倍の投与でも毒性が認められなかった。そこで、骨の成長期および卵巣摘出後の10日間(骨代謝の回転が高まっている時期)におけるこれら薬剤の効果にかんし、現在データーを蓄積している。一方、骨芽細胞から産生されている血管新生促進物質の単離に関しても現在、その精製を行っているが、本物質の分子量は1万から3万の間で、ヘパリンに対する親和性が全く無く、既知物質とは性格を異にしている。熱に対しても安定であるが今のところ、SDS-PAGEで1バンドでないので、さらに単離精製の必要がある。
|