研究概要 |
デュアルキュアタイプのレジンセメントは,ライトキュアの性質が強く,インレー体を透過する光線量はその重合硬化にとって重要な因子となることが指摘されている。そこで,臨床的な光線照射条件の光学的検討を行うとともに,それぞれの条件が本セメントの硬化物の理工学的性質におよぼす影響を検討しているが,現在までの実験の進行状況ならびにここで得られた知見について報告する。 1. 光線照射条件 光線照射条件のひとつとして,照射器の性能低下に伴う光強度の変化ならびに光線照射時期に着目した。 照射光線の光強度は,市販の照射器への供給電圧を変化させることによって調製を行った。光強度の確認はラジオメーターを用いて行い,同様にしてアルゴンイオンレーザー照射器についても調製を行っている。光線の照射時期としては,製造者指定の照射条件に加えて,セメントの練和に先だって液成分に光線を照射する前照射方式について検討を加えてきた。 2. レジンセメントの光学的性質を知るために,それぞれの硬化試料について光線透過性を測定したところ,臨床的なセメント層の厚さでは透過率は60〜85%であった。また,市販照射器とアルゴンイオンレーザー照射器で透過率を比較すると,後者に高くなる傾向を示した。 3. 光線照射時期として前照射方式を用いた場合,セメント泥の硬化時間は,セメントに照射を行わなかったものに比較して短縮し,また被膜厚さはほぼ同程度となった。 以上の知見を元に,今後さらにこのセメントの臨床使用条件を確立するための検討を継続して行う予定である。
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