作業側の歯の接触に関しては、あくまでガイドまたは誘導という立場から検討を加えたものが多く干渉という立場からの報告は少ない。いずれが誘導で、いずれが干渉かは容易には判定できないが、両者の違いを明確にすることを目的として今回の実験を行った。被験者は健常咬合を有する24歳〜31歳の成人男子8名である。筋活動は表面電極を用いて両側の咬筋浅部(M)、側頭筋前部(AT)、側頭筋後部(PT)より導出した。被験者には犬歯が尖頭対尖頭となる側方位で、(1)作業側犬歯支持(2)作業側第2大臼歯支持(3)平衡側第2大臼歯支持となる実験咬頭干渉装置を装着して咬みしめを行わせた。咬みしめ強さは咬頭嵌合位での最大咬みしめの30〜50%のレベルで3回行った。下顎の変位は4組の差動変圧器を用いて測定した。標点は下顎顔弓上の左右側の犬歯と第2大臼歯の外側部とし、上顎顔弓に固定したコイルでこの標点の上下的な変位を出力し、筋活動電位と共にデータレコーダに収録した。筋活動は平衡側に対する作業側の活動指数を用いて評価した。下顎の変位は、各標点と下顎歯列との相対的な位置関係をもとに、標点の変位量を下顎左右側の犬歯遠心隅角部および第二大臼歯中心小窩部の上下的な変位量へと換算した。得られた結果の概要は以下のごとくである。 1.作業側のあるべき筋活動パターンは、咬筋が両側性に活動する以上側頭筋は作業側優位の方がよい。したがって、作業側犬歯は作業側第2大臼歯よりも咬頭干渉とはなりにくいことが示唆された。 2.作業側の犬歯支持と第2大臼歯支持を比較した場合、仕事はいずれも同じであるが、偏位量はいずれも第2大臼歯支持の方が大きかった。ここにも犬歯の方が咬頭干渉とはなりにくいことが示された。
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