研究概要 |
調音動作のスムーズさによって発音障害の程度が表されるものと推測し、これを判定するために、顔面皮膚上と切歯点の標点の運動を音声と同時記録し、子音発音前後を含む全運動経路を総合的に3次元で解析した。 1.まず画像解析装置によって標点を自動追尾するため、均一な輝度を発生する光点の形状、材質を検討し、小球状のビーズの表面に発光塗料を貼付する方法を考案した。これをファイバー照明装置ライトガイドで照明することによって標点が発光し、被検者に熱、眩しさを与えずに多数の標点の自動トラッキングが可能となった。 2.ハイスピードビデオ(HVS-500型)を改造し、録音再生機能を設け、音声出力をDSP-Sona-Graph(5500型,KAY)に導入してリアルタイムの声紋を表示させ、また、時間軸を拡大してプリントアウトする。これを観察して各音の発生および終了時点のシーンナンバーを正確に求めることによって、解析対象区域を規定できた。 3.画像解析装置(ID-8000,nac製)により自動追尾し、各標点の座標を3次元構築する。さらにコンピューターに転送し、MOVIAS 3Dソフトにより運動経路を解析する。その際に、運動経路の複雑度を表現するため、移動経路の距離累計、迂回度、立体移動範囲、方向変化角度平均などのパラメーターを設け、これらを演算処理するソフトを開発した。 4.このシステムを無歯顎および口蓋裂症例に適用し、補綴処理段階での調音運動と咀嚼運動を解析した。 5.本システムの利点は単に図形あるいは記号や計測値の表示だけでなく、実際の画像の動きを観察できることである。これによって口腔、顔面の運動機能障害の定性的な診断にも適用できる。
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