本年度は、シェーグレン症候群(SS)における全身的な免疫学的異常と、唾液腺機能、唾液腺造影像(唾影像)所見および唾液腺の病理組織学的所見との関連を中心に検索した。血清リウマチ因子(RF)、抗核抗体(ANA)、抗SS-A抗体あるいは抗SS-B抗体が陽性であった症例は、陰性であった症例と比較して、SSに特異的な唾影像の出現率が有意に高かった。さらに、RFあるいはANA陽性症例では陰性症例と比較して、SSに特徴的な病理組織学的所見の出現率が有意に高かった。しかし、これらの自己抗体陽性症例においては陰性症例と比較して、耳下腺刺激唾液分泌量が低下する傾向が認められたものの、両者の間で分泌量に有意差はなかった。他方、末梢血リンパ球のCD4/CD8比が1.0未満の症例では1.0以上の症例と比較して唾液分泌量が有意に低下していた。しかしCD4/CD8比が1.0未満の症例と1.0以上の症例との間で、SSに特徴的な唾影像および病理組織学的所見の陽性率に有意差は認められなかった。 以上の結果から、SSにおいては、各種の自己抗体の出現は唾液腺の器質的変化とは密接に関連するものの、唾液腺機能の低下との関連性は低いことが推測された。一方、末梢血リンパ球のCD4/CD8比の低下は唾液腺の器質的変化とは関連しないものの、唾液分泌量の低下と密接に関連することから、細胞免疫動態の変化と唾液腺機能の低下との関連が示唆された。
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