研究概要 |
卵黄フォスファチジルコリンおよびコレステロール(モル比5:2)をリポソームの構成脂質として使用し,超音波処理(80w,5分)によりシスプラチン封入リポソームを作製した。封入シスプラチン量を原子吸光分光光度計によるPt定量から測定し,封入効率を算出すると約3%であった。さらにシスプラチン封入リポソームの安定性について,放出シスプラチン量を経時的に測定し検討した。37℃培養液(RPMI1640+20%FBS)中では24時間後に封入量の56%,48時間後には72%が放出された。4℃PBS中では24時間後に12%,48時間後で14%の放出がみとめられたのみであり、最低48時間は保存状態で安定であることが示された。 in vitroで悪性黒色腫細胞と正常線維芽細胞にPBS封入リポソームを投与したが、細胞動態に変化はみられず,リポソームの構成成分に毒性はみとめられなかった。さらに,原子吸光分光光度計によるPt定量値を基に各種濃度に調整したシスプラチン封入リポソームとフリーシスプラチンを48時間作用させ,悪性黒色腫細胞に対する抗腫瘍効果を比較,検討すると,シスプラチン封入リポソームの方が低値を示した。その原因として,リポソーム内に封入されたままの末放出シスプラチンが存在し細胞に作用しなかったことが考えられた。またこのリポソームには腫瘍細胞に対する選択性がなく,細胞によるリポソームの取り込みが少なかったことも,抗腫瘍効果の低下した原因と考えられた。今後,腫瘍選択性を増すためモノクロナール抗体結合リポソームを作製し、実験を行なっていく予定である。
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