研究概要 |
抗悪性黒色腫モノクロナール抗体および同抗体をペプシン処理したFab'をシスプラチン封入リポソームに結合し(Ab-Lip-CDDP,Fab'-Lip-CDDP),悪性黒色腫細胞に対する抗腫瘍効果をin vitroでシスプラチン封入リポソーム(Lip-CDDP),シスプラチン(CDDP)と比較検討した.また担悪性黒色腫ヌードマウスに投与しプラチナの組織内濃度を測定した. 細胞は当科で樹立,維持しているHMGを用いた.モノクローナル抗体は悪性黒色腫細胞の表面抗原を認識するマウスIgG抗体でHMGに結合能を示し,ハイブリドーマ培養上清よりプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。抗体とリポソームの結合にはS-S結合架橋剤であるSPDPを用いたが,Fab'では抗体のSH基を利用した.リポソームは構成脂質として卵黄フォスファチジルコリン(PC),コレステロール(CH),フォスファチジルエタノールアミンとSPDPの合成物質(DTP-DPPE)をモル比26:10:0.4とした. in vitroでのHMGに対するAb-Lip-CDDPの抗腫瘍効果は,Lip-CDDPの約2.5倍,CDDPの約20倍であり,他の2群に比し有意差を認めた.しかしFab'-Lip-CDDPでは,CDDPと同等の効果であった.in vivoにおけるAb-Lip-CDDP投与時のプラチナの組織内濃度は腫瘍でLip-CDDPの約1.4倍,CDDPの約2倍であった.腎臓ではLip-CDDPの約70%,CDDPの約50%に減少した. これらの結果からモノクロナール抗体結合抗癌剤封入リポソームによる化学療法は,腫瘍組織に対する特異性を高めると共に副作用の軽減を目的としたターゲット療法として,非常に有用であると考えられた.
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