研究概要 |
X線画像の生成過程に基づいてボケと雑音を解析し,まず,決定論的手法でボケ像を改善した後,雑音に埋もれた信号成分を確率的信号処理により予測して真の像を求めた.雑音に対する画像復元フィルタについては,2種類のベイズフィルタを開発した.一つは画像を走査しながら逐次処理を行うものであり,もう一つは画像の全データを利用した回帰曲線を求めて処理を行うものである.シュミレーションと標準ファントムによる医用X線画像に適用した実験で有効に働くことを確認した.平成4年度は,画像からの情報を多角的に抽出するためにX線画像に種々のフィルタをかけこれらフィルタの開発を行った.次に,抽出された特徴量をもとに,ファジィ理論を応用した診断支援システムを構築した.頭頸部領域の多種の病変を含むX線写真を抽出し,個々の写真に存在する異常陰影を作成したシステムに入力して分類し,ディジタル化した画像とともにデータベースとした.平成5年度は,システムの各部の独立したモデル間の相互の関係を求め,融合したシステムを開発した.本システムの歯科領域への適用として,顎骨内に生じる病変である含歯性嚢胞,歯原性角化嚢胞,エナメル上皮腫の鑑別診断を試みた.これらは,いずれも発生頻度が高いが,予後が異なることから相互の正確な鑑別診断が必要とされているが,三者とも臨床症状がよく似ていることから,鑑別診断はX線画像診断に依るところが大きい.そこで,多項反応におけるロジスティック回帰を用いた統計的手法による検討と,ニューラルネットワークによる鑑別診断を行い比較検討した.これらは,平成7年7月日本医学物理学会第12回研究発表会で「ニューラルネットワークおよび統計的解析による歯科領域疾患の鑑別診断」として,同9月第36回日本歯科放射線学会総会で「含歯性嚢胞,歯原性角化嚢胞,エナメル上皮腫の鑑別診断-統計的解析法およびニューラルネットワークを用いて-」として発表した.また,平成8年9月の第37回日本歯科放射線学会総会で「エキスパートシステムによる歯科領域疾患の鑑別診断」として発表した.
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