研究概要 |
1、エナメル上皮腫の腫瘍細胞の特性を解析するために、各種成長因子が及ぼす影響を腫瘍の発生母体と考えられている正常ラットエナメル芽細胞と比較検討を行った。 (1)正常エナメル芽細胞が7日から10日間のみ培養可能であったのに対して、エナメル上皮腫は2から3カ月培養可能であり、明らかに生存期間の延長が観察された。 (2)エナメル上皮腫細胞では、1.0ng/ml以上のEGFは増殖抑制と一部の細胞の紡錘形細胞への形態変化を誘導したが、一方、エナメル芽細胞では増殖促進に作用し、形質的変化は観察されなかった。 (3)エナメル上皮腫では、TGF-βは0.1ng/ml以上の濃度で増殖抑制と扁平な細胞への形態変化を誘導したが、一方、エナメル芽細胞では特に顕著な変化は見られなかった。 以上の結果より、エナメル上皮腫細胞は、腫瘍発生過程においてEGFレセプターやTGF-βレセプターの数や細胞内情報伝達系に異常が生じていることが示唆された。 2、エナメル上皮腫の細胞株の作製。 本腫瘍細胞にHPV-16DNAを導入し、3種類の不死化細胞(AM-1,2,3)を得た。AM-1,2はEGFにより増殖を促進したが、AM-3は増殖の抑制と紡錘形細胞への形態変化を示した。上記の結果を考慮すると、この結果はエナメル上皮腫の腫瘍細胞内にはEGFに対して異なる反応を示す細胞が存在していることが推測された。これは、細胞の分化度によるものか、悪性化によるものか今後検討が必要である。
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