癌遺伝子、腫瘍マーカーの増幅を指標とした口腔癌の生物学的悪性度と癌治療への応用

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454509
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 小田島 哲世 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00177239)
• 研究分担者: 片岡 親男 札幌医科大学, 医学部, 助手 ; 平塚 博義 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50165180)
• キーワード: 癌遺伝子 / 癌抑制遺伝子 / 癌転移抑制遺伝子 / P-53 / NM23 / NDP Kinase / 口腔癌 / 生物学的悪性度 / 予後

研究概要

口腔癌135例の組織切片に対しP53遺伝子蛋白の単クローン抗体を用い、P53遺伝子産物の免疫活性を検索、口腔癌の臨床病理学的因子、予後との関係を検索した。P53免疫活性は臨床病期やリンパ節転移、癌の浸潤様式とは相関しなかつたが、比較的小さな腫瘍ではP53免疫活性陰性例が多かつた。一方、P53免疫活性と予後との関係では、P53免疫活性陽性例は陰性例に比し、患者の生存率は有意に低下していた。P53は口腔癌における独立した予後因子になりうるものと考えられた。
口腔癌におけるP53遺伝子の突然変異を検出するために口腔癌組織よりDNAを抽出、P53遺伝子のエキソン5、6、7、8、9に対するプライマーを作製、テンプレートDNAと共にPCR-SSCP法にてDNAを増幅した。このサンプルに対してさらに電気泳動を行い、銀染色法にてP53の点突然変異を伴うバンドを検出した。口腔癌36例中11例(-30.5%)にP53の突然変異が認められ、うち9例は蛋白レベルにおいてもP53免疫活性は陽性を示した。現在、さらに口腔癌の多数例についてP53の突然変異を高率に検出すべくPCRの最適条件を検討し、またP53遺伝子の突然変異と17番染染色体消失との関係についても検討している。
口腔癌における癌抑制遺伝子産物NM23/NDP kinase(NM23)の発現と臨床病理学的因子、予後との関係を検索した。口腔癌137例におけるNM23免疫活性は腫瘍の大きさ、臨床病期、癌の浸潤様式、癌の組織学的悪性度とは相関しなかつたが、NM23免疫活性強陽性の39例中26例(66.6%)はリンパ節転移陰性であつた。またNM23免疫活性強陽性例はNM23免疫活性低下ないし陰性例に比し予後良好であつた。NM23は口腔癌における独立した予後因子になりうるものと考えられた。またP53とNM23の発現は逆相関する傾向があり、P53活性陽性でNM23活性低下ないし陰性の例はP53活性陰性、NM23活性強陽性の例に比し、予後は有意に不良であつた。

研究成果

• [文献書誌] Yokoi,T.,et al.: "Some properties of a newly established human cell line derived from a oral squamous cell carcinoma." Tumor Res.25. 93-103 (1990)
• [文献書誌] Odajima,T.,et al.: "Electron microscopic features of malignant dyskeratosis in human oral squamous cell carcinoma." Tumor Res.25. 63-68 (1990)
• [文献書誌] Yokoi,T.,et al.: "Establishment and characterization of two new cell lines derived from oral squamous cell carcinomas." Tissue Culture in dentistry. 27. 5-7 (1990)
• [文献書誌] 平田章二、他: "口腔癌に対する腫瘍マーカーGlutathione-S-transferase-piの臨床的評価." 頭頸部腫瘍. 17. 91-95 (1991)
• [文献書誌] Hirata,S.,et al.: "Significance of glutathione-S-transferase(GST)-pi as a tumor marker in patients with oral cancer." Cancer. 70. 2381-2387 (1992)