本研究の主たる目的は、マウスの歯・顎・顔面頭蓋の成長育における母体の影響のうち出生後母体効果の影響の大きさを解明することにある。そこで、実験動物として大型の近交系マウス(IAI)と小型の近交系マウス(C57BL)の2系統を用いて次のような実験を行なっている。 (1)それぞれの系統で、仔マウスの産出を行っている。 (2)産出された仔マウスを2系統間で交換して、里親飼育を行なっている。 (3)これら仔マウスの出生直后からの頭部の成長発育の様子を、頭部X線規格写真撮影装置にて経時的に観察している。 (4)顎顔面頭蓋分析システムにより、各仔マウスの顎顔面頭蓋の形態を分析中である。 (5)得られた仔マウスの顎顔面形態について、自家飼育仔マウス群と里親飼育仔マウス群で比較検討し、出生後母体効果の影響の大きさを解明している。 現在4組のペアについての分析を行なって以下のような結果を得た。 (1)2系統の仔マウスの、出生后の体重変化における育ての親マウスの影響は、哺乳期間である5日齢〜10日齢で最大に有意であった。 (2)仔マウスの体重の成長変化において、性差は離乳期である20日齢前後からみられるようになってきた。 (3)自家飼育仔マウス群と里親飼育仔マウス群の間では、有意な体重差が哺乳期間において著しくみられた。そしてその群差は、離乳後もしばらくの間みられた。 以上より、仔マウスの生後の成長に、育ての母親マウスの影響が重要な働きをしていることが示唆された。実験は現在も進行中であり、顔面頭蓋骨についての分析も行なっている。
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