研究概要 |
本年度はT-Scan PCを用いた咬合診査による結果が個人の咬合咀嚼機能に関する基礎情報となりうるかどうかを検討することを目的とした.喪失歯のない25-40歳の成人52名を被検者として,T-Scanを用いた咬合診査をforce movieモードで2回記録した.咬合診査記録の解析項目は2回目の記録を用い,初期接触時および最終の接触時の接触点数および咬合圧の相対的大きさを歯種・歯群別に求めた 初期接触を歯種別にみると,大臼歯部および前歯部に初期接触が見られることが多く,左大臼歯部で26.8%,左小臼歯部で12.5%,前歯部で25%,右小臼歯部で8.9%,右大臼歯部で39.3%であった.また,被検者別に初期接触をみると,左あるいは右大臼歯部にのみ認められたものが多く,被検者の45%であった.また,前歯部のみに初期接触がみられたものは19.6%,小臼歯部のみは13.7%,小臼歯および大臼歯部のみは7.8%その他両側大臼歯部のみは5.8%,前歯部および大臼歯部のみは5.8%であった.最終接触を歯種別にみると,ほとんどの例で大臼歯部に見られ,左大臼歯部で85.8%,左小臼歯部で60.7%,前歯部で51.8%,右小臼歯部で39.3%,右大臼歯部で94.6%であった.また,被検者別に最終接触をみると,両側大臼歯部に認められたものが多く,被検者の46.4%であった.小臼歯部および大臼歯部にみられたものは23.2%,前歯部,小臼歯部および大臼歯部でみられたものは5.4%であった.一方、片側の大臼歯部のみは16.1%で,前歯部のみにみられたものは8.9%であった。 今回の調査対象は喪失歯のない被検者であったが,上下顎前歯部のみの早期接触が約20%と比較的多く認められ,前歯部のみで咬合している被検者と片側でのみ咬合できる被検者が25%認められたことから,喪失歯のない成人集団であっても,その咬合状態が食品の咀嚼性に何らかの影響を与えている可能性があり,被験者の特性の診査項目として有用であることが示された.
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