研究概要 |
スクロース類似体であるキシロシルフルクトシド(XF)は、う蝕誘発菌Streptococcus sobrinusのグルコシルトランスフェラーゼ(GTase)を効率よく阻害することがこれまでの研究で明らかにされている。う蝕に関与すると思われる種々の酵素に対してどのように作用するかを明らかにすることと、甘味を有するXFのう蝕予防甘味剤としての適性を検討することである。この目的に沿って、本年はまずXFが口腔内細菌とくに歯垢内レンサ球菌によって資化されるか否かを菌株を増やして検討した。その結果、血清型a,b,c,gのミュータンスレンサ球菌のXF初期発酵速はスクロース初期発酵速度の0.8〜4.4%であり、これらの菌のXF資化能は極めて弱いことが分った。S.sanguis,S.mitis,S.milleriのXF資化能もミュータンスレンサ球菌同様弱かった。しかし、S.salivariusの2株はXFを比較的容易に分解し、pH低下をきたした。現在、XF分解に関与すると思われる本菌の酵素の抽出を行っているところである。また、S.sobrinus,S.sanguisをXFを含む培地で10回継代培養した後、XF発酵能を調べた結果、S.sanguisはXFへの適応性を示した。現在、この違いを酵素レベルで調べているところである。 一方、GTaseに対するXFの影響の検討は予定よりやや遅れているが、現在続行中である。S.mutans,S.sanguis,S,salivariusのGTaseを精製中であり、それらに対するXFの影響については来年度の検討項目とする予定である。他の関連酵素(フルクトシルトランスフェラーゼ,スクロースホスフォリラーゼなど)に対する影響についても次年度以降の検討項目としたい。
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