研究概要 |
1:補体第4成分(C4)の活性化に伴う分子構造変化:補体系が活性化されると、C4はC4a,C4bの2フラグメントに切断される。このとき、高次構造も変化し、α鎖の中央部付近の疎水性領域が、C4の分子表面から分子内部に移行することを明らかにした。 2:制御因子の構造と機能:自己の細胞膜を自己補体攻撃から保護している2種類の制御因子、MCPとDAF、を遺伝子導入法により異種細胞に発現させ、細胞表面での補体制御活性を比較検討した。その結果、DAFの方がMCPよりも制御活性が強いこと、MCPは抗体非依存性の補体活性化の方を強く阻害することを明らかにした。さらに、両者を結合させたキメラ型蛋白質を作製し、これが、制御因子として優れた活性を示すことを明らかにした。 3:血管内皮細胞における制御因子の発現調節機構:血管内皮細胞にはMCPとDAFが発現していて、自己補体攻撃から血管内皮細胞を保護している。血管内皮細胞のヒスタミン刺激によりMCPの蛋白合成が活発になり、発現量が約2倍になることを明らかにした。また、MCPは代謝回転が早く、細胞表面から遊離することを明らかにした。 4:アナフィラトキシンの生物活性:アナフィラトキシンは補体成分、C3,C4,C5,から遊離する生理活性フラグメント(10kDa)である。本研究では、これまで研究の遅れていたC3aの細胞刺激活性やレセプターの性質について解析した。さらに、これまでC4aとC3aは共通のレセプターを介して食細胞を刺激すると考えられてきたが、これらは別個のレセプターを刺激することを明らかにした。 5:C1qレセプターを介した食細胞の機能修飾:免疫複合体にはC1qが結合しているところから、食細胞による免疫複合体の貪食のさいにはC1qレセプターも関与する可能性が考えられる。食細胞のC1p刺激により、細胞内Ca動員、免疫複合体の貪食活性の亢進が観察された他に、通常は細胞外に放出される活性酸素が食胞内に貯留されることも明らかになった。即ち、C1qレセプターは、異物処理に伴う活性酸素依存的な組織障害を抑制する働きをしている可能性を強く示唆する。
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