研究概要 |
(1)弱塩基性薬物は組織成分であるフォスファチジルセリン(PhS)と強く結合すること、(2)ラットにおけるこれら薬物の組織分布の程度(組織-血漿間分配係数、Kp値)は組織間のPhS濃度の変動で説明できること、さらに、(3)薬物間のKp値の違いは薬物とPhS間の結合能の違いで説明出来ることを既に報告している。 上記に述べた知見(2、3)が他の動物種においても有効であるか否かについて検討する為、実験動物として家兎を用い、弱塩基性薬物であるキニジンのKp値の測定、および組織中フォスフォリビッド組成、特にPhS濃度の定量を行った。キニジンの血漿中濃度を、定常状態(1.87μM)に保った場合、各組織におけるKp値は、肺,52.4±23.9;脾,34.9±14.1;腎,20.4±7.3;肝,18.7±4.8;小腸,11.5±2.7;心,7.3±3.4;胃,6.5±1.4;筋肉,3.7±1.2;精巣,2.9±1.3であった。また、2次元薄層クロマトグラフ法で分離し、過マンガン酸塩灰化法(リン脂質-テストワコー、和光純薬)で定量した家兎各組織中のPhS濃度(mg/g組織)はそれぞれ、肺,2.29;脾,1.39;腎,1.38;肝,1.10;小腸,0.80;心,0.37;胃,0.54;筋肉,0.55;精巣,2.9であった。 上記の各測定結果から、組織中PhS濃度とKp値の関係を求めたところ、両者の間には相関係数0.996の良好な関係が認められ、家兎に於てもキニジンの組織間分布変動は、組織間のPhS濃度の変動に依存していることが明かとなった。さらに、既に求めているラットにおけるKp値やPhS濃度と、家兎における両者の値を比較したところ、両動物間で差は認められず、ほぼ同一の値を示した。現在ヒトでの組織分布を予測すべく、他の動物種を用いさらに検討中である。
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