薬剤耐性遺伝子の活性発現調節機構と進化の解析

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454535
• 研究機関: 明治薬科大学
• 研究代表者: 小河原 宏 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (00097198)
• 研究分担者: 浦辺 宏明 明治薬科大学, 薬学部, 助手 (20201361) ; 東 恭一郎 明治薬科大学, 薬学部, 助手 (10189748)
• キーワード: 薬剤耐性遺伝子 / 放線菌 / 遺伝子発現 / 進化 / beta-ラクタマーゼ

研究概要

1.放線菌Streptomyces cacaoi由来のbeta-ラクタマーゼ遺伝子の発現活性化領域のヌクレオチド配列決定により、beta-ラクタマーゼの活性発現には少なくとも2-3種の調節蛋白質が関与していることが明らかとなった。この遺伝子はbetaラクタマーゼ遺伝子とは約200塩基対離れ、逆方向に位置していた。また、この調節蛋白質はbeta-ラクタマーゼの活性発現上昇のみならず、酵素の誘導にも必須のものであった。更にこの蛋白質はbeta-ラクタマーゼ遺伝子とこれら調節遺伝子の間の領域に結合してこれらの作用を現していた。
2.上記のbeta-ラクタマーゼとは異なるタイプで、病原菌のOXA型(D型)の酵素とブルーデキストランを結合する点で共通する2種のbeta-ラクタマーゼ遺伝子を放線菌Streptomyces cellulosae KCCS0127とStreptomyces lavendulae KCCS0263よりクローニングし、そのヌクレオチド配列を決定した。それぞれ311個、307個のアミノ酸からなる蛋白質をコードしていた。このアミノ酸配列をほかのbeta-ラクタマーゼのものと比較するとOXA型(D型)のものとは異なりA型のbeta-ラクタマーゼ群に属することが明らかとなった。その結果、放線菌のbeta-ラクタマーゼはブルーデキストラン結合性により大きく二つに分類できるが、この分類はそのアミノ酸配列による分類とよく相関していた。
3.現在遺伝子構造が知られている47種のbeta-ラクタマーゼの遺伝子配列に基づきその系統樹を近隣結合法により作成した。その結果は従来の分類とほぼ一致するものの、A型beta-ラクタマーゼは大きく三つに分類できることが明らかとなった。また放線菌のbeta-ラクタマーゼはブルーデキストラン結合性のものと非結合性のものは別のグループに属し、それぞれ結合性のものはグラム陰性菌染色体性beta-ラクタマーゼに、非結合性のものは、Bacillus属由来のbeta-ラクタマーゼに近いものであることが明らかとなった。
4.beta-ラクタマーゼ遺伝子の一部がほかの遺伝子の近傍に転移している現象が見いだされた。

研究成果

• [文献書誌] Urabe,H.: "Involvement of two genes in the induction of beta-lactamase in Strebtomyces cacaoi." Actinomyce to logica. 7. 65-67 (1993)
• [文献書誌] Ogawara,H.: "Phuylogenetic tree and sequence siwilarity of beta-lactamases" Mol.Phuylogenetics Evol.2. 97-111 (1993)
• [文献書誌] Sendouda,A.: "Cloning rucleotide sequence and expression of a beta-lactamase gene from Streptonyces lavendulae." FEMS Microliol.Lott. 112. 343-348 (1993)
• [文献書誌] Ogawara,H.: "gene transfer of a paut of a beta-lactamase gene ?" Microliol.Immunol.37. 399-403 (1993)
• [文献書誌] Ogawara,H.: "Clouing sequlnce and expression of the aigG gene from Streptomyces lavendulae" gene. 125. 91-96 (1993)
• [文献書誌] Ogawara,H.: "Sequence of a gene encoding beta-lactamase from Streptomyces cellulosae" gene. 124. 111-114 (1993)