研究概要 |
1.前年度の研究より放線菌のβ-ラクタマーゼはアミノ酸配列がきわめて類似するが、ブルーデキストラン結合性で二群に分類できることが判明した。そこでブルーデキストラン結合に関与するアミノ酸配列を決定するためキメラタンパク質を作成すると共に、部位特異的変異導入法で検討した。その結果、ブルーデキストランへの結合にはN末端より約2/3の分子全体の立体構造が重要であることが判明した。また第1群と第II群のβ-ラクタマーゼの性質はアミノ酸配列から推定されるより大きく変化することも明らかとなった。 2.ペニシリン結合タンパク質など53種のβ-ラクタム抗生物質と相互作用することが知られているタンパク質のアミノ酸配列に基づき系統樹を作成し、これを6群に分類した。現在行われている分類4群A,B,C,Dのβ-ラクタマーゼはそれぞれ異なる群に分類された。更に放線菌由来の3種のDD-カルボキシペプチダーゼは同じ反応を触媒するにもかかわらず異なる群に分類された。またOchrobactrum authropiのD-アミノ酸ペプチダーゼおよびPseudomonas のエステラーゼはグラム陰性菌由来のβ-ラクタマーゼと相同性が高く、これらの活性が異なる反応を触媒するにもかかわらず互いに共通のタンパク質に由来た可能性が示唆された。このことは現在問題とされているβ-ラクタマーゼによる耐性の範囲の拡大はβ-ラクタマーゼ内のアミノ酸変化によるものが主であるが将来は異なる反応を触媒する酵素の変異による可能性もあることを示すものである。
|