研究概要 |
本研究では、各種の心臓病、血管病の成因、発症の機構などにおける力学要因を、心臓の力学、血流の流体力学的研究を通じて解明し、予防法、治療法開発の基礎とすることでを目的として平成4年度から実施中である。この基本的目的の達成のために、心臓の力学的研究と血流の数値流体力学的研究を統合して、主要な研究手段とする。研究対象としては、計算手法それ自身よりも、モデルの作成技法の開発に重点をおき、数値計算の結果の確認と、その病態生理学的意義の検証にも重点をおいて数値流体力学シミュレーション手法の確立を図る研究を続行してきた。 研究計画の第2年度である本年度では、まず、前年度までに開発した写実的モデリング技術を、実際に心臓血管系に応用して、心臓および血流の力学モデルを各種作成した。これらのモデルについて、数値流体力学シミュレーション計算を、各種の生理的パラメタを変えながら行なった。この結果,特に,粥状動脈硬化症との関連で注目されている壁剪断応力の空間的分布について興味深い結果が得られた。特筆すべきであるのは,従来,大動脈分岐などにおいて,粥状動脈硬化症の好発部位と一致するとみなされてきた壁剪断応力の最も低い場所は分岐外側部ではないことが示された点である。この点は,今後の研究において詳細に検討する。また,内皮細胞の形状を模したモデルにおける計算では,内皮細胞の変形,配向について興味ある力学的考察が可能であることがわかった。この点も,本研究の最終年度である来年度において詳細に検討する予定である。
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