研究概要 |
(1)抗サブスタンスP(SP)抗体のラット脊髄クモ膜下腔内(i.t.)投与は、反復低温ストレス(RCS)およびカラゲニン処置により発症する痛覚過敏を有意に抑制したが、NK_1受容体拮抗薬CP-96,345のi.t.投与は、カラゲニン誘発痛覚過敏を顕著に抑制し、RCS誘発痛覚過敏には有意な影響を及ぼさなかった。CP-96,345のi.t.投与は、SPのi.t.投与により誘発される仮性疼痛行動を用量依存的に抑制したが、大量投与でも完全に抑制することはなかった。また、CP-96,345(i.t.)は、グルタミン酸受容体作用薬であるNMDA、AMPAとカイニン酸のi.t.投与により惹起される仮性疼痛行動を抑制しなかった。RCSあるいはカラゲニン処置により痛覚過敏状態にあるラットは、SP(i.t.)に対する反応が増大あるいは増大傾向が観察された。アジュバント接種による痛覚過敏状態のラットでは、SP誘発仮性疼痛行動の増大は必ずしも明らかでなかった。この点については更に検討中である。NK_1受容体mRNAの脊髄内分布は予想外に少なくin situ hybridization法では再現性ある現出がかなり困難である。現在、PCR法による検討を平行して行なっている。 (2)NMDA受容体拮抗薬APV(i.t.)は、NMDAとSPのi.t.投与による仮性疼痛行動を有意に抑制し、カイニン酸のi.t.投与による仮性疼痛行動を抑制しなかった。APV(i.t.)は、カラゲニン処置による痛覚過敏を顕著に抑制したが、RCSによる痛覚過敏には有意な影響を及ぼさなかった。Non-NMDA受容体拮抗薬CNQX(i.t.)は、カイニン酸、AMPAあるいはSPのi.t.投与による仮性疼痛行動を有意に抑制したが、NMDAで惹起される仮性疼痛行動を抑制しなかった。CNQX(i.t.)は、カラゲニンによる痛覚過敏を顕著に抑制したが、RCSによる痛覚過敏には有意な影響を及ぼさなかった。脊髄におけるnon-NMDA受容体mRNAの分布は多く、脊髄後角への局在は認められていなく、痛覚過敏状態における発現量の変化を検出することは現在までのところ成功していない。
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