ラットへの反復低温ストレス負荷あるいはアジュバントの後肢への接種により惹起される痛覚過敏が、NK1受容体拮抗薬CP-96345(0.3-10nmol)、NMDA型受容体拮抗薬APV(1-30nmol)及びnon-NMDA型受容体拮抗薬CNQX(1-30nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与により用量依存的に抑制された。NMDA(1nmol)及びAMPA(1nmol)の脊髄クモ膜下腔内投与で惹起されるラットの仮性疼痛反応が、反復低温ストレスとアジュバント接種により約2倍に有意に増大した。しかし、高用量のNMDA(10nmol)及びAMPA(3 nmol)により惹起される仮性疼痛反応には、反復低温ストレスとアジュバントの接種のいずれも有意な影響を及ぼさなかった。サブスタンスP(1nmol)のラット脊髄クモ膜下腔内により惹起される仮性疼痛反応はアジュバント接種で有意な影響を受けなかった。アジュバントの一側後肢への接種(10日後に追加接種)の1日後およびび13日後或は尾部への接種の21日後で、脊髄後角におけるNK1 mRNAの発現レベルに明らかな増加が観察されなかった。アジュバントの一側後肢への接種の13日後或は尾部への接種の21日後で、脊髄後角におけるNMDAR1 mRNAの発現レベルに明らかな増加が観察されなかった。前年度の結果も考慮すると、(1)反復低温ストレスあるいはアジュバント接種による痛覚過敏に脊髄後角におけるサブスタンスP作動及びグルタミン酸作動性シナプス伝達の促進が一部関与すること、また、(2)一次求心線維から脊髄後角内へのサブスタンスPやグルタミン酸の遊離量が増加していると推測される末梢組織の炎症状態下でも、これら伝達物質に対する反応性が低下せずむしろ増大していることが示唆される。しかし、反応性増大のメカニズムにNK1mRNA及びNMDAR1mRNAの発現量の増加が関わる程度は少ないと考えられる。
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