研究概要 |
これまで検討してきた非分泌型Cu,Zn-ヒトSOD遺伝子の5′末端に分泌型蛋白であるインターロイキン2のシグナルペプチドをコードする遺伝子を組み込み、分泌型Cu,Zn-ヒトSOD遺伝子を作製した。この際シグナルペプチドをコードする遺伝子と非分泌型Cu,Zn-ヒトSOD遺伝子の5′末端の間にはアミノ酸1個もしくは11個に相当する切断部位を挿入した。これら分泌型Cu,Zn-ヒトSODcDNAをpRc/CMVベクターに組み込み、これらをラット皮膚継代線維芽細胞ならびに継代肺上皮細胞にリポフェクション法を用いて導入した。その結果、分泌型Cu,Zn-ヒトSODcDMA遺伝子をこれら細胞に導入することで、各細胞培養液中SOD濃度は増加した。したがって、Cu,Zn-ヒトSODはこれら形質転換細胞より合成され、かつ、細胞外へ分泌されていることが明らかとなった。ここでパラコートならびにキサンチン/キサンチンオキシダーゼによる活性酸素負荷を行ったところ、親細胞は濃度依存的に死滅したが、分泌型SODcDNA遺伝子を導入しSOD蛋白を産生ならびに分泌している形質転換細胞においては、その生存率が著しく上昇し、ほぼ非活性酸素負荷時の状態と同程度であった。この際、親細胞において膜の過酸化脂質量は増加したが、形質転換細胞では、細胞膜の過酸化量は非活性酸素負荷の状態と同程度であった。したがって、ラット継代細胞に分泌型Cu,Zn-ヒトSODcDNA遺伝子を導入することにより、活性酸素毒性に対する抵抗性が著しく増大し、これは一部、活性酸素による細胞膜障害が緩和されるためであることが明らかとなった。
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