研究概要 |
小型の猿(コモン・マーモセット、体重300-400g)を実験動物として用意し、MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)を用いてパーキンソン病モデル動物を作製した。すなわちMPTP2.5mg/kgをケタミン麻酔下で静脈内に投与した。投与後は摂食不十分な時期が出現するためマーモセットゼリーを用いて経口で栄養補給を行った。MPTPの投与回数は動物を観察して決定し、振戦、寡動、巧緻運動動作などのパーキンソン病症状のみられるモデル動物となるようにMPTPを投与した。なお投与後実験開始まで2カ月以上の充分な回復期間を設けた。 MPTPの投与により動物のchecking behaviourが減少あるいは消失し、移所性自発運動も低下した。巧緻運動動作が拙劣となり移動時の動作開始時にhesitationがみられるようになった。また動作時の前肢に振戦が観察された。このモデル動物を用いてD1ドパミンアゴニストの抗パーキンソン病作用を検討した。 D_1ドパミンアゴニストとしてSKF38393(partial agonist)とSKF82958(full agonist)を用いた。SKF38393の投与(1-20mg/kg,i.p.)ではモデル動物のパーキンソン病症状は改善されず、高用量では無動がむしろ増強された。嘔吐嘔気はみられなかった。SKF82958の投与(0.3-1.0mg/kg)では投与数分後よりchecking behaviourが増加し同時にケージ内での止まり木間あるいは床上での運動量も増加した。その持続時間は約60分であった。またSKF82958の投与を繰り返すとけいれんを起こすものがあった。 微小透析法(microdialysis)では麻酔下でガイドカニューレを尾状核頭部に挿入固定し、無麻酔でプローブを挿入しSKF38393の作用を検討したところドパミンの放出が増加することが明きらかとなった。
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