研究概要 |
パーキンソニズムに対するドパミンD_1受容体の機能を検討するため、D_1受容体アゴニストのSKF3839,SKF82958,CY208-243をモデル動物に投与した。投与方法は腹腔内注射とした。運動量は赤外線ビームを用いた自動運動量測定装置により検討し、巧緻運動や振戦は動物をビデオに撮影した後、観察した。 SKF38393の投与ではモデル動物の自発運動量は増加せず、高用量ではむしろ減少する傾向がみられた。また、アキネジアは更に強くなり動作は遅く、驚かされても動けなくなった。SKF82958の投与では投与後軽度の嘔気を認め、数分後よりアキネジアが消失しはじめ、次第に活発に動き廻るようになった。投与後15〜30分がピークで、効果は約60分間持続した。CY208-243の投与でも同様に効果がみられた。その持続はSKF82958よりもやや長かった。 D_2受容体アゴニストのQuinpirole併用では、アキネジアを改善するquinpiroleの効果は、SKF38393により抑制された。しかし抗パーキンソン病作用を認めたSKF82958あるいはCY208-243との併用では、パーキンソン病様症状の改善効果が増強された。 正常のコモン・マーモセットの線条体上の頭蓋骨にガイドカニューレを固定し、血液透析膜を用いた透析プローブを挿入したのち、人工髄液を用いて還流し、線条体のドパミンおよびその代謝物質を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定した。その結果、SKF38393の投与(腹腔内)では細胞外ドパミンおよびその代謝物質の量は増加した。しかしSKF82958,CY208-243では変化しなかった。D_1受容体アンタゴニストのSCH23390では細胞外ドパミン量が増加し、動物のアキネジアも増強した。以上よりSKF38393はD_1受容体アンタゴニストとして働いている可能性も考えられる。
|