研究概要 |
生体内には多種多様の生理活性物質が超微量からある程度の量にわたって存在し、健康状態を維持している。臨床化学分析においては種々の生体内生理活性物質を測定することにより、診断の助としている。なかでも微量または超微量の成分に関しては、免疫反応を利用した化学発光イムノアッセイが最近開発され、繁用されている。本研究では化学発光法よりさらに高感度な生物発光法を用いれば、従来検出し得なかった微量成分が検出可能となり、さらに病態の解明に寄与出来る可能性があると考え、本研究に着手した。一方、最近の遺伝子工学の進歩に伴い、種々の酵素が再構成されるようになり、生物発光酵素のホタルのルシフェラーゼも安定に大量に入手可能となった。本酵素は酵素自身を修飾に用いると、酵素活性を著しく損なう。そこで本研究では、ホタル ルシフェラーゼの発光反応に必要なATP産生酵素と組み合せることによりATP産生酵素の活性測定に利用する方法を考案した。ATP産生酵素としてアセテートキナーゼ(AK)を用い、超高感度なアッセイ系を確立する目的で 以下の検討を行なった。 1)生物発光検出によるAK活性測定法 基質にアセチルリン酸を用およびADPを用い、生成するATPをルシフェリン-ルシフェラーゼで生物発光検出する方法を確立した。本法でAKは10^<-20>モルまで測定可能となった。 2)AK標識Xイムノアッセイ系の確立 高分子生体成分としてホト甲状腺刺激ホルモン(TSH),IgG,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などについてのイムノアッセイ系を確立した。 3)AK-ビオチンを用いるイムノアッセイ系の確立 本アッセイ法をユニバーサルな方法とするためにAKにビオチンを標識し、アビジン-ビオチン系を用いることにより、すべての測定系に利用できるようにした。この方法を用いたキットがキッコ-マン(株)により実用化され、発売される予定である。
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